それは、家族との楽しい旅行の帰り道、高速道路のサービスエリアでの出来事でした。運転の疲れを癒し、お土産を買い込み、さて出発しようかとポケットを探った時、そこにあるはずのスマートキーの感触がありませんでした。一瞬で血の気が引きました。ジャケットのポケット、ズボンのポケット、カバンの中、考えられる全ての場所を探しましたが、どこにもありません。おそらく、トイレに立った際か、売店で財布を出す際に、ポケットから滑り落ちてしまったのでしょう。周囲を探し回りましたが、見つかりませんでした。見知らぬ土地、時刻はすでに夕暮れ。家族の楽しかった思い出が、一瞬にして不安な空気へと変わりました。途方に暮れた私は、スマートフォンで加入している自動車保険のロードサービスの番号を必死で探し出し、震える手で電話をかけました。しかし、返ってきたのは「キーの作成はサービスの対象外です」という非情な答えでした。次にディーラーに電話するも、営業時間は終了。万策尽きたかと思われた時、藁にもすがる思いで「現在地+車のキー作成」と検索し、ヒットした鍵屋に電話をかけました。事情を話すと、「時間はかかりますが、向かえます」という、まさに天の助けのような返事が。そこからの二時間は、心細さとの戦いでした。日が沈み、気温が下がり、家族を乗せたまま、ただひたすら待つ時間は、永遠のように感じられました。ようやく到着した鍵屋の作業員の方は、手慣れた様子で作業を開始し、一時間ほどで、見事に新しいスマートキーを作成し、イモビライザーの登録まで完了させてくれました。エンジンがかかった時の安堵感と、家族の笑顔は、今でも忘れられません。結局、費用は六万円以上かかりましたが、あの絶望的な状況から救い出してくれたことを思えば、必要な出費だったと今では思えます。この一件は私に、スペアキーを持たずに遠出するリスクと、どんな状況でも諦めずに解決策を探すことの重要性を、身をもって教えてくれました。