一軒家は、マンションなどの集合住宅と比べて、侵入経路が多く、空き巣などの犯罪者に狙われやすいという宿命を背負っています。そのため、鍵交換を行う際には、単に古くなったものを新しくするという発想ではなく、「いかにして防犯性能を最大限に高めるか」という、積極的な視点を持つことが極めて重要です。そのための鍵選びと、それに伴う費用について考えてみましょう。まず、基本となる玄関ドアの主錠は、迷わず「ディンプルキー」タイプのシリンダーを選ぶべきです。その中でも、官民合同会議で定められた厳しい防犯性能試験に合格した製品にのみ与えられる「CP認定錠」のマークが付いたものであれば、さらに安心です。このCP認定錠は、ピッキングやドリルによる破壊など、侵入犯罪者が用いる様々な手口に対して、五分以上の抵抗性能があることが証明されています。部品代は二万円から四万円程度と高価になりますが、その投資価値は十分にあります。しかし、現代の防犯の常識では、どれだけ高性能な鍵でも、一つだけでは不十分とされています。そこで不可欠となるのが、「ワンドアツーロック」、つまり主錠に加えて「補助錠」を増設することです。空き巣は、侵入に時間がかかることを極端に嫌います。鍵が二つあるというだけで、犯行を諦めさせる視覚的な抑止効果と、実際に侵入にかかる時間を倍増させる物理的な効果が期待できます。この補助錠の設置費用は、鍵の種類にもよりますが、部品代と工事費を合わせて、三万円から五万円程度が相場です。さらに、一軒家特有の弱点となるのが、「サムターン回し」という手口です。ドアスコープや郵便受けから工具を差し込み、内側のつまみ(サムターン)を回して解錠するこの手口に対抗するため、ボタンを押しながらでないと回せない「防犯サムターン」への交換も検討しましょう。これには、プラス五千円から一万円程度の追加費用がかかります。主錠の交換、補助錠の増設、そしてサムターン対策。これら三点セットで、総額は七万円から十数万円になることもありますが、それによって得られる「破られにくい家」という安心感は、何物にも代えがたい、家族の未来を守るための投資なのです。
防犯性を高める一軒家の鍵選びと費用