一人暮らし、あるいは高齢の夫婦だけで暮らす親御さん。元気でいてくれることが何よりですが、万が一、家の中で倒れてしまったり、緊急の助けが必要になったりした場合に、「玄関の鍵がかかっていて、中に入ることができない」という事態は、絶対に避けなければなりません。いざという時に、迅速に安否確認や救助活動ができるよう、高齢者宅の「鍵の管理」について、日頃から家族で話し合い、具体的なルールを決めておくことは、非常に重要です。まず、最も基本的な対策が、子供や近所に住む信頼できる親族が、「合鍵」を持っておくことです。これは、言うまでもなく必須の備えです。ただし、その合鍵を、自宅の郵便ポストや植木鉢の下といった、安易な場所に隠しておくのは絶対にやめてください。空き巣に「どうぞ入ってください」と言っているようなもので、非常に危険です。合鍵は、必ずそれぞれの家で、責任を持って保管しましょう。次に、より柔軟な対応を可能にするのが、「キーボックス(鍵の保管箱)」の活用です。これは、暗証番号などで開けられる小さな金庫のような箱で、この中に家の鍵を入れておき、玄関先などに取り付けておくものです。そして、その暗証番号を、家族や、登録したヘルパー、あるいは地域の見守りサービスの関係者など、限られたメンバーだけで共有します。これにより、物理的な合鍵を複数人に渡すことなく、必要な時に、必要な人だけが、家の中に入れるようになります。さらに、近年注目されているのが、「スマートロック」の導入です。スマートフォンアプリを使えば、遠隔地にいる子供が、実家の玄関の鍵を解錠してあげることができます。例えば、親からの連絡が途絶えた際に、様子を見に行ってくれた隣人や親族のために、一時的に鍵を開けてあげるといった、柔軟な対応が可能になります。また、ドアが開閉されると、その履歴が子供のスマートフォンに通知されるため、日々の活動状況をさりげなく見守るツールとしても機能します。どのような方法を選ぶにせよ、重要なのは、「緊急時に、誰が、どのようにして、安全に家の中に入れるか」というシナリオを、親子間で明確に共有しておくこと。その事前の備えが、万が一の時に、かけがえのない命を救うことに繋がるのです。