車のキーを紛失してしまい、無事に新しいキーが手元に戻ってきた。これで一件落着、と安心してしまうのは、実は非常に危険です。あなたが無くしたそのキーが、もし悪意のある第三者の手に渡っていたとしたら。その人物は、いつでもあなたの愛車に近づき、いとも簡単にドアを開け、エンジンをかけて乗り去ってしまうことができるのです。キーの紛失は、単に「車に乗れなくなる」という不便な事態だけでなく、その後の「車両盗難」という、より深刻なリスクをはらんでいることを、決して忘れてはなりません。特に、自宅の駐車場や、いつも利用する月極駐車場などでキーを紛失した場合は、要注意です。キーを拾った人間が、その周辺の車に片っ端からリモコン操作を試していけば、合致する車を見つけ出すことは、決して難しくありません。また、キーホルダーに自宅の鍵や、個人情報が分かるようなものを付けていた場合は、さらにリスクが高まります。犯人は、あなたの留守を狙って、堂々と車を乗り去っていくでしょう。では、この見えない脅威から愛車を守るためには、どうすれば良いのでしょうか。最も確実で、根本的な解決策は、費用と時間はかかりますが、「キーシリンダーとECU(エンジンコントロールユニット)を交換、あるいは再設定する」ことです。これにより、紛失したキーに記録されているIDコードは、完全に無効化され、物理的にも、電子的にも、二度とあなたの車を動かすことはできなくなります。これは、いわば家の鍵を、錠前ごと交換するのと同じ考え方です。ディーラーに相談すれば、この作業を行ってくれます。そこまでの費用はかけられない、という場合でも、最低限の自衛策は講じるべきです。ハンドルを物理的に固定する「ハンドルロック」や、タイヤをロックする「タイヤロック」といった、視覚的にも防犯効果の高いグッズを活用しましょう。また、車両に衝撃が加わると警報音が鳴る、後付けのセキュリティアラームを設置するのも有効です。キーを紛失したという事実は、あなたの車のセキュリティが、一度、完全に無防備な状態になったということを意味します。その事実から目を背けず、起こりうる最悪の事態を想定して、可能な限りの防犯対策を講じる。それが、愛車を本当に大切にする、責任あるオーナーの務めと言えるでしょう。
車のキーを紛失したら防犯対策は必須